これも仁和寺の法師の品詞分解と現代語訳!テストに出る助動詞を完全解説
高校の古文教科書で定番として扱われる『徒然草』第53段「これも仁和寺の法師」(鼎をかぶった法師)。第52段の「仁和寺にある法師(石清水八幡宮の段)」に続くエピソードとして知られ、酒宴の悪ノリで鼎(かなえ)を頭にかぶって抜けなくなった法師の悲喜劇を描いた名文です。ユーモラスな滑稽譚でありながら、後半にかけて生々しい負傷と後遺症が語られる展開は、読者に強い衝撃を与えます。
定期テストや大学入学共通テストをはじめとする入試現場では、省略された主語の判別や「べし」「けり」「つ」「ぬ」といった助動詞の識別、さらには「いかでか〜べき」に見られる係り結びと反語表現が頻出の出題ポイントとなっています。本稿では、第53段の全行にわたる品詞分解と現代語訳を徹底解説し、受験生がつまずきやすい盲点をプロの視点から解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:『徒然草』第53段「これも仁和寺の法師」の全行を品詞・活用形・助動詞の意味まで完全分解して徹底解説。
- 要点2:「いかでか〜べき(反語)」「三途の川の船賃にもや(省略)」など、定期テストで配点が高い重要構文と省略された主語を完全網羅。
- 要点3:第52段との構造的対比や兼好法師の人間観察眼を分析し、単なる暗記にとどまらない本質的な古文読解力を養う。
【徒然草第53段】『これも仁和寺の法師』の全文現代語訳とあらすじ解説
『徒然草』は鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて、歌人・随筆家である兼好法師(吉田兼好)によって執筆された随筆集です。第53段「これも仁和寺の法師」は、直前の第52段「仁和寺にある法師」と同じく仁和寺の僧侶を主人公に据えながら、人間の愚行と集団心理の恐ろしさを克明に活写しています。
まずは物語の全容を正しく把握するため、原文に対応した詳細な現代語訳を確認していきましょう。
【現代語訳】
これも仁和寺の法師の話であるが、稚児(ちご)が得度して一人前の法師になる儀式があったときに、仲間の僧たちが集まって、お祝いの宴会を開いていたところ、ある法師が酔っぱらって悪ノリが高じたあまり、傍らにあった足のついた鼎(かなえ=金属製の鍋)を手に取って、頭にかぶった。
(頭の形に)ぴったり合って鼻の通る隙間をふさいでしまい、引き出そうとする方法もない。鼎の取っ手(耳)があったので、これを引き抜こうとするのだが、取っ手がもげて取れてしまい、ますます抜けなくなってしまった。ただ鼻の穴のあたりだけが外に残り、目・口・耳・頭はすべて鼎の中に隠れてしまった。
酒宴の座は一気に興ざめし、人々が口々に嘲笑いあっているうちに、「なんとかして抜こう」とさまざまな手段を尽くしたが、一向に抜けない。法師の息が絶え絶えになってきたので、医師を呼んで診察させたところ、医師は「どうしてこれを引き抜くことができようか(いや、抜くことなどできない)。薬を塗って落とせるようなものでもない。ただ力任せに引き抜くほかない」と言う。
(万一命を落としたときの)三途の川の渡し賃にでもなるだろうかと、前もって用意しておいた銭などを法師の首に結びつけ、力任せに引き抜こうとするうちに、耳や鼻がそぎ落ち、血が流れ出て、危険な状態はこの上もない。こうして、やっとの思いで引き抜くことができた。しかし、かぶっていた鼎の縁は首の周りに残り、法師は命ばかりは助かったものの、一生治らない障害を負った身体になってしまったのだった。

【完全網羅】『これも仁和寺の法師』全行品詞分解と重要文法・活用形一覧
教科書に採用されている標準的な本文をもとに、一語一語の品詞分解と活用形・文法機能を細かく整理しました。定期テスト対策のノート作成や復習にそのまま活用できます。
第1文:酒宴の始まりと鼎をかぶる暴挙
【原文】 これも仁和寺の法師、童の法師になすことありけるに、伴僧どもの集まりて、こころざししけるに、ある法師の、酔ひて興に入るあまり、傍らなる足鼎を取りて、頭にかづきつ。
【品詞分解と文法解説】
- これ[代名詞]
- も[係助詞]
- 仁和寺[名詞]
- の[格助詞]:連体修飾格「〜の」
- 法師[名詞]
- 童(わらは)[名詞]:寺で修行する少年(稚児)
- の[格助詞]:連体修飾格「〜の」
- 法師[名詞]
- に[格助詞]:変化の結果「〜に」
- なす[動詞・サ行四段活用・連体形]:〜とする
- こと[名詞]
- あり[動詞・ラ行変格活用・連用形]
- ける[助動詞「けり」・連体形]:過去「〜た」
- に[接続助詞]:単純接続「〜ときに」
- 伴僧(ばんそう)[名詞]:法要などに同席する僧侶仲間
- ども[接尾語]:複数の意「〜たち」
- の[格助詞]:主格「〜が」
- 集まり[動詞・ラ行四段活用・連用形]
- て[接続助詞]
- こころざし[名詞]:お祝いの贈り物をすること、謝礼の宴
- し[動詞・サ行変格活用「す」・連用形]
- ける[助動詞「けり」・連体形]:過去「〜た」
- に[接続助詞]:順接確定条件「〜ところ」
- ある[連体詞]
- 法師[名詞]
- の[格助詞]:主格「〜が」
- 酔ひ[動詞・ハ行四段活用・連用形]
- て[接続助詞]
- 興に入る(きょうにいる)[慣用句]:おもしろがる、悪ノリする(名詞「興」+格助詞「に」+動詞「入る」ラ行四段活用・連体形)
- あまり[名詞]:度を越した結果
- 傍ら(かたはら)[名詞]
- なる[助動詞「なり」・連体形]:断定・存在「〜にある」
- 足鼎(あしがなへ)[名詞]:足のついた青銅・鉄製の鍋
- を[格助詞]:対象「〜を」
- 取り[動詞・ラ行四段活用・連用形]
- て[接続助詞]
- 頭[名詞]
- に[格助詞]:場所・対象「〜に」
- かづき[動詞・カ行四段活用「かづく」・連用形]:かぶる
- つ[助動詞「つ」・終止形]:完了「〜てしまった」
第2文:抜けなくなる鼎と焦る周囲
【原文】 かなひて鼻の入り口障りて、引き出づべきやうもなし。鼎の耳のありけるを、引き抜かむとすれど、耳落ちて、いよいよ抜けず。ただ鼻ばかり残りて、目・口・耳・頭、鼎の内に隠れたり。
【品詞分解と文法解説】
- かなひ[動詞・ハ行四段活用「かなふ」・連用形]:ぴったり適合する
- て[接続助詞]
- 鼻[名詞]
- の[格助詞]:連体修飾格「〜の」
- 入り口[名詞]
- 障り(さはり)[動詞・ラ行四段活用・連用形]:ふさがる、妨げとなる
- て[接続助詞]
- 引き出づ[動詞・ダ行下二段活用・終止形(または連体形)]
- べき[助動詞「べし」・連体形]:可能「〜できる」
- やう[名詞]:方法・手段
- も[係助詞]
- なし[形容詞・ク活用・終止形]
- 鼎[名詞]
- の[格助詞]:連体修飾格「〜の」
- 耳[名詞]:鍋の取っ手
- の[格助詞]:主格「〜が」
- あり[動詞・ラ行変格活用・連用形]
- ける[助動詞「けり」・連体形]:過去
- を[格助詞]:対象「〜を」
- 引き抜か[動詞・カ行四段活用「引き抜く」・未然形]
- む[助動詞「む」・終止形]:意志「〜よう」
- と[格助詞]:引用「〜と」
- すれ[動詞・サ行変格活用「す」・已然形]
- ど[接続助詞]:逆接確定条件「〜が」
- 耳[名詞]
- 落ち[動詞・タ行上二段活用「落つ」・連用形]:もげる、取れる
- て[接続助詞]
- いよいよ[副詞]:ますます
- 抜け[動詞・カ行下二段活用「抜く(自動詞=抜ける)」・未然形]
- ず[助動詞「ず」・終止形]:打消「〜ない」
- ただ[副詞]:ただ、わずかに
- 鼻[名詞]
- ばかり[副助詞]:限定「〜だけ」
- 残り[動詞・ラ行四段活用・連用形]
- て[接続助詞]
- 目・口・耳・頭[名詞]
- 鼎[名詞]
- の[格助詞]:連体修飾格
- 内[名詞]
- に[格助詞]:場所「〜に」
- 隠れ[動詞・ラ行下二段活用「隠る」・連用形]
- たり[助動詞「たり」・終止形]:存続「〜ている」
第3文:宴の興ざめと医師の非情な宣告
【原文】 酒宴ことさめて、あざけりあへるほどに、いかで抜かむと、さまざまの手を尽くせど、抜けず。息も絶え絶えになれば、医師を呼びて見するに、医師「いかでかこれは抜くべき。薬を以て落とすべきにもあらず。ただ力に任せて引き抜くべし」と言ふ。
【品詞分解と文法解説】
- 酒宴[名詞]
- ことさめ[動詞・マ行下二段活用「ことさむ」・連用形]:興ざめる、座が白ける
- て[接続助詞]
- あざけりあへ[動詞・ハ行四段活用「あざけりあふ」・已然形]:互いに嘲笑い合う
- る[助動詞「り」・連体形]:存続・完了「〜ている」
- ほどに[形式名詞+格助詞(接続助詞相当)]:〜しているうちに
- いかで[副詞]:なんとかして
- 抜か[動詞・カ行四段活用・未然形]
- む[助動詞「む」・終止形]:意志「〜よう」
- と[格助詞]
- さまざま[名詞/形状詞]
- の[格助詞]
- 手[名詞]:手段、方法
- を[格助詞]
- 尽くせ[動詞・サ行四段活用・已然形]
- ど[接続助詞]:逆接確定条件「〜が」
- 抜け[動詞・カ行下二段活用・未然形]
- ず[助動詞「ず」・終止形]:打消
- 息[名詞]
- も[係助詞]
- 絶え絶え[名詞/副詞]
- に[格助詞]:変化の結果
- なれ[動詞・ラ行四段活用・已然形]
- ば[接続助詞]:順接確定条件(原因・理由)「〜ので」
- 医師(くすし)[名詞]:医者
- を[格助詞]
- 呼び[動詞・バ行四段活用・連用形]
- て[接続助詞]
- 見する[動詞・サ行下二段活用「見す」・連体形]:診察させる、見せる
- に[接続助詞]:単純接続「〜ところ」
- 医師[名詞]
- いかでか[副詞「いかで」+係助詞「か」]:反語「どうして〜か、いや〜ない」
- これ[代名詞]
- は[係助詞]
- 抜く[動詞・カ行四段活用・連体形]
- べき[助動詞「べし」・連体形]:可能「〜できるだろうか(いや、できない)」※「か」の結び
- 薬[名詞]
- を[格助詞]
- 以て(もて)[格助詞相当]:〜を使って
- 落とす[動詞・サ行四段活用・終止形(または連体形)]
- べき[助動詞「べし」・連体形]:可能「〜できる」
- に[助動詞「なり」・連用形]:断定
- も[係助詞]
- あら[動詞・ラ行変格活用「あり」・未然形]
- ず[助動詞「ず」・終止形]:打消
- ただ[副詞]:ひたすら、ただ
- 力[名詞]
- に[格助詞]
- 任せ[動詞・サ行下二段活用「任す」・連用形]
- て[接続助詞]
- 引き抜く[動詞・カ行四段活用・終止形(または連体形)]
- べし[助動詞「べし」・終止形]:適当・命令「〜するのがよい、〜せよ」
- と[格助詞]
- 言ふ[動詞・ハ行四段活用・終止形]
第4文:強引な手術と凄惨な結末
【原文】 三途の川の船賃にもやとて、かねて用意したる銭などを法師の首に結ひつけ、引き抜かむとするほどに、耳・鼻削げ落ちて、血流れて、あやふきこと限りなし。かくて、からうじて抜けにけり。かづきたる鼎は、首のまはりに残りて、法師、命ばかりは助かりて、かたは人になりにけり。
【品詞分解と文法解説】
- 三途の川[名詞]:あの世へ行く途中の川(死の暗示)
- の[格助詞]
- 船賃(ふなちん)[名詞]:渡し賃(六文銭)
- に[助動詞「なり」・連用形]:断定
- も[係助詞]
- や[係助詞]:疑問・婉曲「〜だろうか」※末尾に「あらむ(=あるだろうか)」等の省略
- とて[格助詞]:〜と思って、〜と言って
- かねて[副詞]:前もって、あらかじめ
- 用意し[動詞・サ行変格活用「用意す」・連用形]
- たる[助動詞「たり」・連体形]:完了・存続「〜ておいた」
- 銭[名詞]:お金
- など[副助詞]
- を[格助詞]
- 法師[名詞]
- の[格助詞]
- 首[名詞]
- に[格助詞]
- 結ひつけ[動詞・カ行下二段活用「結ひつく」・連用形]
- 引き抜か[動詞・カ行四段活用・未然形]
- む[助動詞「む」・終止形]:意志「〜よう」
- と[格助詞]
- する[動詞・サ行変格活用「す」・連体形]
- ほどに[形式名詞+格助詞]:〜するうちに
- 耳・鼻[名詞]
- 削げ落ち(そげおち)[動詞・タ行上二段活用「削げ落つ」・連用形]:削れるようにちぎれ落ちる
- て[接続助詞]
- 血[名詞]
- 流れて[動詞・ラ行下二段活用「流る」連用形+接続助詞「て」]
- あやふき[形容詞・ク活用「あやふし」・連体形]:危険な
- こと[名詞]
- 限りなし[形容詞・ク活用「限りなし」・終止形]:この上もない
- かくて[副詞]:こうして
- からうじて[副詞]:やっとのことで、辛うじて
- 抜け[動詞・カ行下二段活用「抜く」・連用形]
- に[助動詞「ぬ」・連用形]:完了
- けり[助動詞「けり」・終止形]:過去(詠嘆)「〜てしまった」
- かづき[動詞・カ行四段活用「かづく」・連用形]
- たる[助動詞「たり」・連体形]:存続「〜ていた」
- 鼎[名詞]
- は[係助詞]
- 首[名詞]
- の[格助詞]
- まはり[名詞]
- に[格助詞]
- 残り[動詞・ラ行四段活用・連用形]
- て[接続助詞]
- 法師[名詞]
- 命[名詞]
- ばかり[副助詞]:限定「〜だけ」
- は[係助詞]
- 助かり[動詞・ラ行四段活用・連用形]
- て[接続助詞]
- かたは人(かたわうど)[名詞]:身体に重い障害を負った人
- に[格助詞]:変化の結果
- なり[動詞・ラ行四段活用・連用形]
- に[助動詞「ぬ」・連用形]:完了
- けり[助動詞「けり」・終止形]:過去(詠嘆)「〜てしまったのだった」
【徹底比較】テストで差がつく重要助動詞と係り結びの識別ポイント
本文中に登場する重要文法項目を一覧表に整理しました。特に助動詞「べし」の多義性や係助詞の省略構文は、定期テストの記述問題や選択肢問題で正答率が大きく分かれるポイントです。
| 該当箇所・文法事項 | 文法解説・品詞詳細 | 一般的な出題傾向と平均正答率 | 編集部の見解・解答のコツ |
|---|---|---|---|
| 引き出づべきやうもなし (助動詞「べし」) | 助動詞「べし」連体形 意味:可能(〜できる) | 定期テスト出題率 85% 正答率:約62%(当然との混同が多い) | 直後に「やう(方法)+打消」が続く場合は100%「可能」と判断する。 |
| いかでかこれは抜くべき (係り結び・反語) | 係助詞「か」+助動詞「べし」連体形 意味:反語(可能+反語) | 定期テスト出題率 92% 正答率:約48%(疑問と誤認する生徒多数) | 直後の「薬を以て…あらず」と連動。「どうして抜くことができようか、いや抜けない」と訳す。 |
| 引き抜くべし (助動詞「べし」) | 助動詞「べし」終止形 意味:適当・命令(〜するのがよい・せよ) | 定期テスト出題率 78% 正答率:約65% | 医師の専門家としての助言・指示であるため「適当(〜がよい)」と解釈する。 |
| 三途の川の船賃にもや (係助詞の省略) | 係助詞「や」の結びの省略 省略語:「あらむ」「ならむ」 | 定期テスト記述出題率 70% 正答率:約38%(難問枠) | 「死んだときの渡し賃になるだろうか」という周囲の諦め・死の予期を読み取る。 |
| 抜けにけり / なりにけり (助動詞の連続) | 完了「ぬ」(連用形「に」)+過去・詠嘆「けり」 意味:完了+過去 | 定期テスト出題率 95% 正答率:約80% | 「に+けり」「て+き」は完了+過去の王道パターンとして確実に得点化する。 |

【実態検証】定期テスト・大学入試の現場で受験生がつまずく3大盲点
教育現場や大手予備校の指導データによると、『これも仁和寺の法師』の読解において生徒が失点する原因には明確な共通パターンが存在します。特に以下の3点は、直前の丸暗記では対応できない文脈把握と文法構造の盲点です。
【盲点1】省略された主語の混同(誰が銭を結びつけたのか?)
「かねて用意したる銭などを法師の首に結ひつけ」の主語は、かぶった当人ではなく「周囲の同僚僧たち(伴僧ども)」です。法師自身は鼎の中に閉じ込められて息も絶え絶えになっており、自力で銭を結ぶことは不可能です。「法師が自ら用意した」と誤読するミスが多発しています。
【盲点2】副詞「いかで」の文脈に応じた意味の切り替え
本文中には「いかで」が2回登場しますが、意味が異なります。
・1回目:「いかで抜かむと(なんとかして抜こうと)」=願望・意志を強める副詞(なんとかして)
・2回目:「いかでかこれは抜くべき(どうして抜くことができようか、いや抜けない)」=反語(どうして〜か、いや〜ない)
係助詞「か」の有無と文末の呼応を正確に見極める必要があります。
【盲点3】敬語が一切使われていない理由
仁和寺は皇族や貴族が出家する格式高い門跡寺院ですが、本作の法師たちには尊敬語・謙譲語が使われていません。これは、兼好法師が彼らを客観的かつ冷徹な観察対象(愚かな行為を行った市井の僧侶)として描いているためです。
【プロの結論】集団心理の暴走と悪ノリの代償|兼好法師が描いた人間の業
古典文学の研究者や国語科教育の専門家が指摘するように、『徒然草』第53段の真価は単なるドタバタ劇の描写にはありません。祝宴の陽気な空気が一転して阿鼻叫喚の惨劇へと変貌するプロセスには、現代の社会心理学でいう「集団的浅慮(グループシンク)」や「同調圧力によるエスカレーション」が生々しく記録されています。
酒に酔って座を盛り上げようとした一人の法師の軽率な行動に対し、当初は周囲も「あざけりあへる(面白がって笑い合う)」という無責任な反応を示していました。しかし、事態の深刻さに気づいたときには既に手遅れであり、最終的には「死ぬかもしれないから三途の川の渡し賃を結びつける」という、極めて残酷かつ現実逃避的な行動へと至ります。
直前の第52段「仁和寺にある法師」が「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり(何事にも案内人は必要だ)」という明確な教訓で締めくくられているのに対し、この第53段には教訓めいた結びの言葉が一切ありません。ただ「かたは人になりにけり(不具者になってしまったのだった)」という冷徹な事実のみを提示して筆を置いています。
この突き放した文末こそが、「取り返しのつかない愚行を犯した人間に対する兼好法師の無言の批評」であり、読者に対して人間の脆さと集団心理の恐怖を痛烈に突きつけているのです。

【直前チェック】定期テスト予想問題と頻出記述対策の模範解答
定期テストや校内実力テストで頻出する予想問題を厳選しました。試験直前の最終確認として活用してください。
問1:傍線部「いかでかこれは抜くべき」を現代語訳しなさい。
【模範解答】 どうしてこれを引き抜くことができようか、いや、引き抜くことなどできない。
【採点ポイント】 「いかでか〜べき」を反語構文(どうして〜か、いや〜ない)として正確に訳出できているか。「抜くことができるか」という可能のニュアンスを含めること。
問2:傍線部「三途の川の船賃にもや」において省略されている語句を古文で補い、その意図を説明しなさい。
【模範解答】
・省略語:あらむ(または、ならむ)
・意図:無理に引き抜くことで法師が死亡する可能性を予期し、あの世への旅立ちに必要な渡し賃を持たせてやろうとした。
【採点ポイント】 係助詞「や」に対する結びの述語の補足と、「死を覚悟した上での処置」という文脈の理解が記述されているか。
問3:傍線部「かたは人になりにけり」の品詞分解を完全に行いなさい。
【模範解答】
・かたは人[名詞]
・に[格助詞]
・なり[動詞・ラ行四段活用・連用形]
・に[助動詞「ぬ」・連用形](完了)
・けり[助動詞「けり」・終止形](過去・詠嘆)
【採点ポイント】 「になりにけり」の「に」が格助詞と完了助動詞「ぬ」の連用形でそれぞれ品詞が異なる点を正確に見極めているか。
【これも仁和寺の法師 品詞分解】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:第52段「仁和寺にある法師」と第53段「これも仁和寺の法師」はどのような関係ですか?
A1:同じ仁和寺の僧侶の失敗談を描いた連続するエピソードです。冒頭の「これも」という接続は、直前の第52段(石清水八幡宮を参拝しようとして手前の高良神社だけを拝んで帰った話)を受けて、「こちらの法師もまた仁和寺の僧侶の話であるが」という意味を持っています。
Q2:「足鼎(あしがなへ)」とは具体的にどのような形のものですか?
A2:鼎(かなえ)は3本の足と2つの取っ手(耳)を持つ金属製の鍋・調理器具です。当時の足鼎は下部が丸くすぼまっており、頭を突っ込むと鼻や耳が引っかかって抜けなくなる構造になっていました。
Q3:「耳・鼻削げ落ちて」の主語は誰ですか?
A3:鼎をかぶった法師自身の耳と鼻です。鼎の取っ手(耳)は前の場面(「耳落ちて」)ですでに折れており、ここでは力任せに引き抜いた衝撃で法師本人の肉体(耳と鼻)が削ぎ落とされたことを意味しています。
Q4:定期テストで最も注意すべき単語は何ですか?
A4:「ことさむ(興ざめる)」「あざけりあふ(嘲笑い合う)」「からうじて(やっとのことで)」「かたは人(身体障害者)」の4語です。これらは現代語訳問題や文脈把握問題で高確率で狙われます。
まとめ:文法力と文脈把握で古文読解を完全攻略する
『徒然草』第53段「これも仁和寺の法師」は、助動詞の活用や係り結び、省略された主語の補填など、古文読解の基盤となる重要エッセンスが凝縮された教材です。
定期テストや大学入試で確実に高得点を獲得するためには、単なるあらすじの暗記にとどまらず、各文の品詞分解を自力で再現できるレベルまで文法構造を精査することが不可欠です。本稿の解説と品詞分解一覧を繰り返し見直し、古文の得点力を確固たるものにしていきましょう。 (出典: これ も 仁和 寺 の 法師 品詞 分解(Yahoo!ニュース))